天井画

飛天

 5m×10m(主天井) 2.5m×9m(左右側壁面それぞれに)
曹洞宗万年山青松寺 観音聖堂天井画
21世紀を迎え、最初の大仕事がこの天井画のお話でした。江戸幕府よりもずっと以前からあるこのお寺は、東京タワーの足元、お江戸のド真ん中という立地、関東大震災で鳥有に帰した堂塔を再建、周囲の再開発と相まって、グリーンヒルズと称し、超高層、2本のビルを左右の五重塔の様に従えて堂々たる現代の禅寺に生まれ変わったのです。毎年5月、愛宕山祭りとしてNHKの放送博物館と共に古典芸能の主催会場となるなど、公共の利便に尽しながら静かで現代的な仏法興隆の場となっています。
明るく多目的な聖堂ということで、御住職の喜美候部氏の御指導の下、虹彩につつまれた四体の四季をつかさどる飛天を描く事となり、天井側壁の左右面には梅と新月、天の川、満月、雪をかぶる松、と四季の景を配し、濃緑色で飛天の明快さをひきたてる様に工夫いたしました。
青松寺であるから松を描いてくださいという事から松探し。雪の降る時期の前に繰り返し各地へ通ったのです。多雪地だと雪の重みで枝ぶりが重厚になりすぎ、雪のない所の松はどうも軽い感じであり、手入れの行き届いた老松などはあまりに個性的すぎ。ちょうど頃合いの美松を見つけたのは道志の山里でした。旧家と思われる農家の大きな庭に佇立し、堂々たる赤松です。山際であり山すそにあがると目線が高くなってスケッチし易く、全くおあつらえの良いモデルに出会うことが出来たのでした。雪を待ち、早朝から出向くと良い塩梅に積雪していて、午前中が勝負。午後になると雪がだれて、形が悪くなってしまいます。一気に写生し終わると、寒さに震える手で思わず合掌。
完成して半年くらいでしょうか、もう一度松に御礼をと思い立ち出掛けてみると、どうでしょう、美松の影も形もありません。あの広い庭がガランとしてしまい、聞いてみると、春にならない内に一気に枯れて、やむなく根元から切ることになったというのです。松の精霊は、天井画に入ってしまわれたのでした。何とも不思議な、忘れられない記憶となったのです。

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